大好きなきみへ、あの約束をもう一度
「あのね、お母さん」
私は箸を置いてお母さんを真っ直ぐに見つめる。
すると、何かを感じ取ったのか、お母さんも静かに箸を置いて私を見つめ返した。
「あの時は、酷いことを言ってごめんなさい」
「湊……でもあれは、お母さんも同じよ。あなたの大切なモノを蔑ろにするような言い方をしたわ」
「ううん、でも……私を想って言ってくれたんでしょ?そんなの、考えたら分かるはずなのに……私っ」
本当に、お母さんを傷つけるようなことを言った。
いくら感情的だったとしても、あんなこと……。
「だからね、私決めたの。ちゃんと、逃げずにあの日に向き合うって」
「湊、それは……湊にとって一番辛いことじゃない。あなたが辛いなら、あの時は、早織ちゃんのことは、忘れろなんて言ったけど、今のままでも……」
お母さんの言葉に、首を横に振る。
今のままじゃ、ダメなんだ。
だって、あの日の悲しみに囚われて、ずっと前に進めずにただ泣くだけ。
それは……私を大切に思ってくれてる人たちを、傷つけるだけだ。
だから、私は私を大切に思ってくれてる人たちのために進むんだ。
それに、みんなのおかげでちゃんと気づけた。
「これはね、私が心から望んでることなの。そして何より、早織と向き合いたいの」
「早織ちゃんと……」
そう、私の大切な親友とちゃんと向き合う。
私を心配して、自分を蔑ろにしてしまう優しい人。
私に見えていたのが、幽霊なのか幻覚なのかなんて重要じゃない。
早織が何者であっても、私に「そばにいる」……そう言ってくれたあの人を今度は私が救いたいの。
それが、親友として私が出来ることでもあるから。