大好きなきみへ、あの約束をもう一度
その瞬間に、自分の手が温かい何かを掴んだ。
途端に視界がパァァッと開ける。
『湊』
早織……。
そこには笑顔で微笑む早織がいた。
こんな川の中で、早織の姿が見えるわけないのに。
なのに、ちゃんと目の前で微笑んでる。
そして、私の手は……しっかりと、早織の手を握りしめていた。
あぁ……。
この手はもう、離さない。
離して失うあんな痛みなんて……もう知りたくないから。
早織、ずっと私と生きていこう。
『湊、ありがとう……この手を掴んでくれて』
早織……ううん、私こそありがとう。
もう一度、この手を取ることが出来た。
私はようやく、自分を許せそうだよ……。
だけどごめん……。
向こう岸に行ったら願い事を叶えてもらうつもりだったのに……。
酸素が薄くなって、気が遠くなる。
『湊の勝ちだよ……だって湊は、私を助けるために向こう岸に行くことを止めてくれたんだから』
そっか、私の勝ちか……。
それなら、願い事……言ってもいいかな?
『うん、聞かせて?』
……ずっと、傍にいて。
『え……?』
早織の、戸惑うような声が聞こえる。
私の病気のことを心配してるんだろう。
だから、次はもっと強めに言う。
私の中で、一緒に生きて。
早織の思い出も、生きた証も全部持って前へ進むから。
『湊……っ』
早織を一人にしないよ。
だって、私達は親友だから。
ずっと傍にいる、それが私からの早織へのお願い。