大好きなきみへ、あの約束をもう一度
放課後、図書委員会の仕事を終えて、尚先輩となぜか図書室に居座っていた海斗と一緒に下駄箱までやってくる。
「あー!俺の傘は!?」
先に外靴に履き替えた尚先輩が、3年生共有の傘立ての前に立つと、急に叫びだした。
尚先輩、今度は何をやらかしたんだろう。
いちいちリアクションが高いから、どうせ今回も大したことじゃないんだろうな。
「尚先輩どうしたんですか?」
そんな失礼なことを考えながら傍に寄ると、泣きそうな顔を、こちらに向けてきた。
「俺の傘がない!!」
「あぁ……パクられちゃったんですか?どんな傘です?一緒に探しますから」
「ううっ、取っ手が白くて、透明な傘なんだぁ〜」
取手が白くて透明な傘……。
あぁ、よくコンビニで売られてるような、他の傘と見分けのつかないビニール傘のことね。
それって、見つけられるかな……どれも一緒に見えるし。
「あー、それじゃあパクられるっすよ」
「そんなぁ〜っ!!」
確かに……。
それなら、どれが自分のビニール傘なのか分からなくなった誰かが、尚先輩の傘を持ってっちゃったのかな。