大好きなきみへ、あの約束をもう一度
「朝から雨だったし、傘もってきてないヤツいないだろ?それなら、尚先輩も、どれか使っちゃえばいいんじゃないっすか?」
「何言ってるんだ、海斗くん!!」
すると、突然大声上げて尚先輩は海斗の肩を掴む。
「あの傘じゃなきゃダメなんだ!!俺には、あの子しかいないんだよっ!!」
そう言ってグランッグランッと揺らした。
「う、うぇっ……揺さんで下さいっ……」
海斗が吐きそう……。
透明な傘なんて、どれも同じなんじゃ……。
「一度手に取ったら、わが子も同然!」
「なぁ湊、尚先輩ってちょっと変わってる……いや、変人だろっ!!」
嘆いている尚先輩の隣で、海斗が私にそう耳打ちしてくる。
ちょっとっていうか……。
「……かなりの変人ね」
大事なことだから二度言うけど、かなりの変人なのだ、尚先輩は。
「はぁ……尚先輩」
昇降口のガラス張りの扉から見える激しい雨を見て、私は自分の傘を取り、尚先輩を振り返る。
とにかく、尚先輩をこの大雨の中返すわけにもいかないし……。
だからって傘を貸したら私が濡れるし……。
「私の傘に入って下さい」
「え??」
「尚先輩の家まで送りますから」
尚先輩の家がどこだか分からないけど、送って帰ればいい話だし。
そう思って言ったのに、なぜか尚先輩と海斗は驚いた顔をした。