大好きなきみへ、あの約束をもう一度
「急に立ち止まったから、びっくりしただろ。どうした、なんかあったか?」
「あ、ううん……ちょっと、考えごと」
いけない、あの日に囚われるな。
また、あの日を思い出して幻覚に襲われる。
こういうのは、時々あった。
川とか、プールとか……水に関するものを見た時は特に。
だから嫌なんだ、雨なんて。
「考え事って……なんか、顔色悪いぞ」
「大丈夫……ごめん待たせて、帰ろう」
「……わかった」
私が海斗を促すように1歩を踏み出すと、海斗はなぜか寂しそうな顔をしてついてきた。
どうして、寂しそうな顔をしたんだろう。
あの顔が頭から離れない。
いつも、笑ったり怒ったり……感情はハッキリしててわかり易かったからかな。
何かを飲み込んだような……あの表情が気になる。
『大切な人に頼ってもらえないのって、寂しいよね』
え……?
早織は自分の傘を少し上げて私を見ると、そう言った。
大切な人、頼ってもらえないことが寂しい?
そんな、海斗にとって私は……ただ面白いから傍にいるだけ。
別に、大切とかそんなんじゃ……。