大好きなきみへ、あの約束をもう一度
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高校2年生の6月。
私は今、早織がいなくなる前の日常へと戻っている。
「おはよー、ねぇ、明日の授業最悪じゃない?」
「あー、確かに、ゴローの授業じゃん」
朝登校してくると、生徒達の楽しそうな声が聞こえてきた。
そう、これが日常。
でも、誰の声もどこか遠くに感じて、雑音としてしか返ってこない。
……そう、ただ1人を除いては。
『ねぇ湊、またオシャレしないの?』
「どうして、オシャレが必要なの?ここは、勉強する場所でしょ」
私は肩にかかった長い天然パーマの黒髪を払う。
Yシャツに灰色のブレザーとスカートを身につけて、こうして教室の自分の席へと着席した。
そう、これが私の日常。
時は進んだのに、私の心はずっと早織を失う前の時間にとり残されてる。
『高校生活は勉強だけじゃないんだよ?』
「早織は勉強をもっとした方がいいんじゃないの」
『ふふっ、私はいいんだよ。湊さえ、学校生活を楽しく過ごしてくれれば』
そう、私に声かけてくれるこの人は、早織。
あの日、私の前から消えてしまった……大切な親友だった。
早織は変わらぬ姿で、私の前に現れる。
どんな時も、何があっても一緒、離れないという約束を守って、傍にいてくれた。