エリート外科医の一途な求愛
ここで強気に出られる意味がわからなかったから、気味の悪さも手伝って、私は素で怯んでしまう。


「なあ、仁科さん。医局の教授の座って、臨床医よりも研究医の方が就きやすいって知ってるか?」

「え?」


まるで睨め付けるような視線を受けて、私は短く聞き返した。
私の反応に、木山先生は満足げにフッと笑う。


「教授って言うのは、論文の数が物を言うからね。いつまでも手術に追われて、なかなか論文が進まない各務先生より、俺の方が断然有利だってこと。准教授がそのままスライドして教授になるって、決まってるわけじゃないんだからさ」


……と、言われても。
正直、今の教授の次なんてあまり想像したことがない。
それをいきなりリアルに突き付けられて、私の方が戸惑う。


「現教授の退任は、まだ先のことじゃないですか。各務先生だって論文はたくさん書かれているし、来月、学会出席の予定もあります。それに、数が多けりゃいいってもんでも……」


それで間違いないはずだ、と思いながら、私は木山先生にそう言い返したけれど。


「俺の論文は、数は多いが質が悪いとでも言いたいのか」


どうやら更に機嫌を損ねてしまったようだ。


木山先生に反論しようとすると、どうしても各務先生が引き合いになる。
なんだか、私が各務先生をエコ贔屓してると言われてるみたいで、面倒臭い。
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