エリート外科医の一途な求愛
各務先生の言う通り、教授と一緒に東京に帰るべきだった、と本気で後悔した。
出張の同行は秘書として私の仕事だと思ってたけど、木山先生にとって私は、各務先生とセットで敵として認定されてしまったようだ。


「君は医局秘書なんだから、俺の論文補佐もちゃんとやって欲しいね」

「論文補佐なら、やりますよ、もちろん」

「それなら、次の論文のことでも話そうか。食事くらい付き合えよ。行くぞ」


そう言って、木山先生は私の腕を強引に引っ張り寄せる。
不意を突かれて、私は軽くよろけてしまった。その時。


「午後六時を過ぎたら、仕事も何もないでしょう。このご時世で、わざわざ時間外労働を強いる上司が、どこにいるんですか」


キビキビした声が背後で聞こえ、私も木山先生もほとんど同時に振り返った。


そこに立っていたのは、さり気なくブランド物のポロシャツとブラックジーンズをセンスよく着崩した男性。
サラッとしたラフなヘアスタイルの各務先生が、不機嫌そうに眉を寄せ、腕組みして立っていた。


「か、各務っ……!?」


反応したのは、木山先生の方が先だった。
私は休日スタイルの各務先生が一瞬わからず、木山先生に掴まれた手を振り解くのも忘れていた。
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