エリート外科医の一途な求愛
「木山先生。彼女の手を離してください。仁科さんは今日は休日出勤のはず。それに、平日だとしてもこの時間もう就業時間外ですよ」


各務先生は素っ気なくそう言って大股で歩み寄ってくると、私の手から木山先生の手を蝿でも払うように払いのけた。
解放された手に無意識に目を遣ってから、私は目の前に立った各務先生を見上げる。


「ど、どうしたんですか。先生、どうしてこんなとこに?」


呆然としたまま訊ねると、各務先生は眉を寄せ、フイッと私から顔を背けた。


「俺の休日をどう使おうが、俺の勝手だろ」

「えっ、と……プライベートで福岡まで旅行に来たとでも?」

「……悪いか」


それしか考えられないから直球で訊ねると、各務先生は不貞腐れたような声で短く返してくる。
呆気にとられてポカンと口を開ける私の前で、同じように呆けていた木山先生が先に気を取り直したように、「くっ」と小さな笑い声を漏らした。


「はっ……。つまり、各務先生は仁科さんの終業時間を狙って、プライベートで会いに来たってことか」


揶揄するようにわざとらしくゆっくり大きな声で言う木山先生を、私はギョッとしながら振り返った。


「へえ……ずいぶん堂々と医局内恋愛してるってことですか」


相変わらず嫌らしい言い方をする木山先生に、各務先生は完全に開き直った様子で『そうですよ』と答える。
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