エリート外科医の一途な求愛
私が見学ルームで各務先生のオペを見ていたのは、ほんの一時間ほどだ。
私以上に名残惜しそうなブラウン博士をメグさんが外に連れ出し、私たち三人は、大学病院の設備や病棟を見て回った。


病院の見学が終わると、医学部棟の案内もした。
フッと覗いた大講義室では木山先生が講義中で、ブラウン博士はその様子もとても熱心に見つめていた。


教授の代わりに二人の案内対応をしながら、私は何度も時計に目を落とした。


私たちが見学ルームを出た時も、オペは終わる様子じゃなかった。
通常の心臓オペでも、十時間以上かかる物はザラにある。
心移植なんて難しいオペが、どのくらいの時間を掛ける物か、私には想像もつかない。


今日は一日中太陽の陽射しが照り付けていた。
ようやく太陽が西に傾き始めた午後五時半過ぎ、私は二人の案内を終えて医局に戻った。


医局では、美奈ちゃんが既に仕事を終え、デスクを片づけているところだった。
帰り支度を進める彼女に、各務先生のオペの状況を聞いてみたけど、詳しい連絡はないらしい。


「まだ終わってないみたいです。十二時間以上のオペなんて、先生ってほんと大変ですよね~……」


どこまでも一般人の感想は、私も美奈ちゃんとそれほど変わらない。


それでもこの目で見てきたからわかる。
緊張感漂う中で長時間集中力を保ち続けるなんて、各務先生の精神状態も極限を超えてるはずだ。
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