エリート外科医の一途な求愛
なんだか胸が詰まって何も言えないまま、私は西日が射し込む大きな窓の方を見遣った。
窓の外には、ちょっと遠目だけど附属病院の建物が見える。
「今年に入って何例目なんですかね~。明日の朝刊とか、各務先生一面トップ飾るのかなあ」
そんなことを間延びした声で呟きながら、美奈ちゃんが『新聞買って来なきゃ!』と、ポンと手を打った時、医局に研修医を従えた木山先生が戻ってきた。
それを見て、美奈ちゃんが『お疲れ様です』と声を掛ける。
木山先生は彼女の横でわざわざ立ち止まって、研修医が奥に向かうのを見送りながら、同じ挨拶を返した。
その視線がこっちにも向けられるのを感じて、私は反射的に視線を横に流して逃げた。
「木山先生、心移植手術って言ったら、どのくらい時間掛かるもんなんですか?」
デスクに施錠した美奈ちゃんが、肩にバッグを掛けながら無邪気に訊ねる。
聞かれた木山先生は、もちろん各務先生のオペの話題だとわかっているんだろう。
一瞬確かに眉間に皺を寄せた後、美奈ちゃんに明るく笑い掛けた。
「今回のは心移植だけだろ? 他臓器の移植も並行してるわけじゃないし、よほどのことがなきゃ、そろそろ終わるんじゃないのか?」
窓の外には、ちょっと遠目だけど附属病院の建物が見える。
「今年に入って何例目なんですかね~。明日の朝刊とか、各務先生一面トップ飾るのかなあ」
そんなことを間延びした声で呟きながら、美奈ちゃんが『新聞買って来なきゃ!』と、ポンと手を打った時、医局に研修医を従えた木山先生が戻ってきた。
それを見て、美奈ちゃんが『お疲れ様です』と声を掛ける。
木山先生は彼女の横でわざわざ立ち止まって、研修医が奥に向かうのを見送りながら、同じ挨拶を返した。
その視線がこっちにも向けられるのを感じて、私は反射的に視線を横に流して逃げた。
「木山先生、心移植手術って言ったら、どのくらい時間掛かるもんなんですか?」
デスクに施錠した美奈ちゃんが、肩にバッグを掛けながら無邪気に訊ねる。
聞かれた木山先生は、もちろん各務先生のオペの話題だとわかっているんだろう。
一瞬確かに眉間に皺を寄せた後、美奈ちゃんに明るく笑い掛けた。
「今回のは心移植だけだろ? 他臓器の移植も並行してるわけじゃないし、よほどのことがなきゃ、そろそろ終わるんじゃないのか?」