エリート外科医の一途な求愛
その翌日。
帰国を明日に控えたブラウン博士とメグさんから、私は夕食に招待された。
もちろん、私だけではなく各務先生と一緒。
私と各務先生は、日中の仕事を終えた後、六本木の高級イタリアンレストランに向かった。


各務先生にとって、二人との食事は仕事ではなくプライベート同然。
私にとっては仕事だし、各務先生も無理には誘わなかったけど、私はもちろん断らなかった。


アメリカ留学中の各務先生を良く知る『友人』の二人。
そんな二人とプライベートで接する時、各務先生はどんな顔をするんだろう。
そんな好奇心が抑えられなかったからだ。


店内の奥まったリザーブ席で向かい合うと、二人のドクターはすぐに上着を脱ぎネクタイを緩めた。
食前酒で乾杯すると、テーブルにはすぐに、楽しそうに会話する二人の英語が飛び交った。


各務先生も、まるでネイティヴ並みの美しい発音で、かなり早口な英語を繰り出す。
もちろん私には何を話しているのかちんぷんかんぷん。
時々メグさんが二人の話題を教えてくれたけど、会話にはついていけない。
それでも、実は年齢も近いという二人のドクターがとても楽しそうだったから、見てるだけでも胸の中がほっこりした。


メイン料理がサーブされた時、メグさんが各務先生に、『ねえ』と日本語で話しかけた。
それが、英語のわからない私への気遣いなのはもちろんわかる。
つまり、私にも聞かせるつもりで言ってるということ。
私もそっと目線を上げた。
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