エリート外科医の一途な求愛
私の隣で『ん?』と返事を返す各務先生に、メグさんがニヤッと笑いかける。


「アメリカに戻って来ないのは、『彼女』のせい?」


言い切ると同時に、メグさんの視線が私に移ってくる。
一瞬、何の意味だかわからず首を傾げる私の隣で、各務先生が軽くワインに噎せた。


「ごほっ……。メグ、なんのことだ?」


口元にナプキンを当てた後、各務先生は眉を寄せて訊ねかける。
ブラウン博士が、『何?』と言うようにメグさんに耳を近づけた。
彼女は多分、自分が各務先生に向けた質問を、英語で伝えているんだろう。


そこに、各務先生は英語で割って入る。
おかげで私には、会話の断片もわからなくなってしまうけど。
三人で英語の応酬をした後、メグさんの目がちょっと意地悪に歪んだ。
そして、『ハヅキ』と私に呼び掛けてくる。


「ハヅキ。ハヤトのオペ、食い入るように見ていたわよね?」

「え?」


そう訊ねられて、一瞬ドキッとしながら、私は各務先生にそっと横目を向けた。


「は、はい。食い入る、と言うか……まあ、見惚れてました」


ちょっと恥ずかしいけど、それは素直な気持ちだ。
肩を竦めて答えると、各務先生は『え?』と訝し気に私に視線を向けてきた。


「君、この間撮影で見学した時も、後ろの方に隠れてたって、高瀬さんから聞いたけど」

「う、まあ……。だって私、一般人ですもん。やっぱりその……オペを生で見るのは怖いってわけで……」
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