エリート外科医の一途な求愛
「それでよく、移植手術なんか見てられたな」


本当に不思議がってるんだろう。
各務先生はキョトンとした顔で首を傾げた。


「それは、えっと……」


まだつい一昨日の話だ。
あの時私がどんな気持ちでオペをする彼を見ていたか。
それを思い出すと、ドクンと胸が大きな音を立てた。


「……この手が患者さんの命を繋ぐんだなって。そう感じたら、すごいなって思って。オペ中の各務先生って素敵だな、カッコいいなあって。だから……」


ちょっと照れ臭かったけど、お酒の酔いもあって素直に言えた。
間違いなくドキドキしたし、それはあの時周りにいたみんな、同じはず。


そんな思いで言い切った。
けれど。


「っ……」


各務先生は大きく目を見開いてから、カッと頬を赤らめた。
その反応に、私の方が驚いてしまう。


「えっ……先生……?」


私たちの向かい側では、メグさんが律儀にもブラウン博士に私たちのやり取りを伝えている。
どこまで聞いた後なのか、ブラウン博士が冷やかすような口笛を吹いた。
『ハヤト、Congratulation!』と手を叩き出す。


それに各務先生が腰を浮かせて、またしても早口な英語で言い返した。
私はメグさんに通訳を求めたけど、彼女は頬杖をついて二人のドクターを微笑まし気に見つめるだけで、私には話を教えてくれなかった。
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