エリート外科医の一途な求愛
その後、四人でワインボトルを三本空け、ちょっとほろ酔いになってレストランを出た。


私たちより酔っ払ってるブラウン博士とメグさんは、二人でお互いの肩に腕を回し、朗らかに大声で歌いながら、タクシー乗り場に向かっていく。
私は苦笑しながらその一歩後を歩き、各務先生は私からちょっと遅れてついてくる。


ちょうど停まっていたタクシーに乗り込むと、陽気なアメリカ人二人が私を見上げてきた。


「ハヅキ、良かったら途中まで一緒にどう?」


二人が宿泊しているホテルが、ここからだと私のマンションと同じ方向だというのは、さっき話題に上がった。
それを聞いて、甘えようかと一歩足を踏み出す。
けれど。


「……仁科さん」


各務先生が私の腕を引いて止めた。


「メグ、彼女は俺が送ってく」


頭上から聞こえたそんな声に、思わず彼を振り仰ぐ。
タクシーから顔を出していたメグさんが、からかうような瞳を各務先生に向けて、フフッと笑った。


「そう? じゃあ、ハヤトに任せた方がいいのかしら」

「ああ。サンキュ」


各務先生はそう言いながら、握った手を隠すように背中に回した。


「か、各務先生……?」


私は思わず彼の横顔を見上げた。
各務先生がメグさんに向けるまっすぐな瞳に、ドキンと胸が跳ね上がる。
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