エリート外科医の一途な求愛
引き摺ってなんかいないけど、そのせいで臆病になっていたのは自覚してる。
みんなに人気のあるイケメンと言うより、いつもキラキラ輝いてる人を敬遠していた。


だって、そういう人じゃ、いつか私より大事な物が出来て、また裏切られる。
私だけってわかりやすい人じゃないと、不安で堪らない。


『まあ、いつ帰ってくるかもわからない相手だし、遠恋に踏み切るよりは始めない方がいいってのも、理解出来る。でもさあ……そこまで傾いちゃってるなら、葉月は割り切れないんじゃないかと思うんだよね』


千佳さんも、言葉を考えるようにそう言った。
美奈ちゃんは途中から泣き上戸になって、『そんなの、各務先生が可哀想です』と鼻を啜った。


一通りみんなに言われたことを思い出し、一瞬視界の焦点が合わなくなる。
目を向けているだけのメールが、ぼんやりと揺れてぼやけていく。
メールの返事を書く指が止まった。


無意識に重い溜め息をつきそうになって、私は両方の頬をパシッと叩いた。
『待てない』と答えを出して、約束を拒んだのは私だ。


だって、仕方ない。
こんな私が待っていても、ただの足手まといになるだけ。
それに、日本で一緒にいても不安なのに、離れても大丈夫なんて自信は持てない。


「しっかりしろ」


自分で自分に発破をかけて、私は再びメールに焦点を合わせた。


『メグさん、各務先生の住居の件、またご連絡お待ちしてます』


そう書いて、一度確認した後、送信した。
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