エリート外科医の一途な求愛
なのに「は?」と短く聞き返された。


「なんで礼?」

「傘と、今助けてもらったことに関してです」


私は頭を上げながら、気を取り直して返事をする。
それを聞いて、各務先生は一瞬きょとんとした顔で私を見つめ返して、グシャグシャと髪を掻き回した。


「傘はともかく、助けたってよりも邪魔した、が正しいけど」

「は?」

「いや、別に。……そうじゃなくて。今聞いたけど、なんか俺に取材依頼が来てるって?」


そう言いながら、後ろを振り返って美奈ちゃんを顎でしゃくって示す各務先生に、私も「あ」と声を上げた。


「そうでした。忘れてた」


さっき一緒に戻ってくる時に、その話があることを思い出せば良かった。
そうしたら無駄に緊張しなくて済んだし、各務先生を濡れ鼠にする羽目にもならなかったのに。


ポンと手を打ってから、しっかり頭を仕事モードに切り替える。


「忘れてた、じゃ困るんだけど」


各務先生の小さな皮肉も、今はスルー。


「はい。すみません。先生、今ちょっとだけお時間よろしいですか」


時間を確認しながら訊ねると、各務先生はちょっと不機嫌そうに眉を寄せ、『はいはい』と言うように頷いた。
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