エリート外科医の一途な求愛
何が言いたいんだ、この人は。
そんな思いが、思いっ切り声に出てしまった。


それでも、各務先生の方は気にした様子もない。
どうやら、昨夜からの失礼極まりない私の発言のせいで、もう割と耐性がついてしまったのかもしれない。


それなら、縦社会を恐れることはない。
私は膝の上の手帳を一度パタンと閉じて、その上で両手の指を組み合わせた。


「私の言った通りじゃないですか。各務先生、放っておいても女が寄ってきます。医局であんなに囲まれてたじゃないですか」

「女って。研修医だろ」

「みんなにチヤホヤされて、鼻の下伸ばしてたじゃないですか」

「伸ばしてねえって。……ああ、まあなんとなくわかった。つまり、そのイケメン元カレに浮気されたってとこか」


ニヤニヤしながらドンピシャで言い当てられ、私はムッとして口を噤んだ。


「で、捨てたの? 捨てられたの?」

「どうして人の心の傷抉るようなことが聞けるんですか」

「捨てられた方か。良かったじゃないか、そんなくだらない男と縁が切れて」


人間性すら疑いたくなるようなことをさらっと言われて、私の頭の中で何かがブチッと音を立てて切れた。


「わかったようなこと、言わないでください!!」
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