エリート外科医の一途な求愛
何度も一緒にオペをしているせいか、こうして見てると、目線だけで会話ができるんじゃないかと思うくらい、息もピッタリだ。


「……どうせなら、彼女相手の会食にした方が、会話も弾むし絵的にもいいと思うんだけどな」


思わずボソッと独り言を呟いてしまう。
私の前に立っていた研修医が『ん?』と言うように振り返ってきた。
それに慌てて首を横に振り、唇を引き結んでから、私はそおっと見学ルームの壁際まで退散した。


この間の撮影の時も器械出しを担当していたナースだから、高瀬さんも彼女を覚えていた。
今回の撮影では、各務先生のオペについて、彼女からもコメントをとることになっている。


スケジュールの打ち合わせの時、電話でそう言うのを聞いて、私は高瀬さんに会食相手の変更を申し出たのだけど、


『会食は各務先生のプライベートの顔に迫るのが目的ですからね。先生が仁科さんを指名したなら、それで構いませんよ。ああ、ほら。オペ中の先生と医局での先生の違いなんかも話してくださいよ』


そんな言葉で逆にプレッシャーを掛けられてしまった。


カメラが向けられるのは、各務先生だけなんじゃなかったっけ?
それも、各務先生は『使われるのはほんの数分』って言ってたのに。
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