特進科女子と普通科男子
「……そんな雰囲気には見えなかったよ?」
「小学校の話だもん。それから全力で頑張って、元通りに振る舞えるようになったんだ」
笑いながらも、その表情は痛々しくて。
まるで、水に溺れるような息苦しさを感じて胸を押さえる。
宮ちゃんは力無く笑ったまま。
その瞳が僅かに潤んでいるように見えるのは、私の気のせいではないだろう。
「私、元通りなんて望んでなかった」
「だけど」
「ずっと、目も合わせて貰えなくて……それが辛くて、必死に冗談だって嘘ついたんだ」
嗚咽を耐えながら、彼女は想いを吐き出してゆく。
その姿が、全てを物語っていた。
「……今も、好きなんだね」
彼女は、はっとしたように顔を上げて、ゆるゆると顔を歪める。
震える唇が「由李」と呼んだ気がしたけど、それは声にはならなかった。
彼女は、もがくようにぐっと胸を掴む。
俯いた瞳から、ぽろりと涙を落とす。
ーーそれが、答えだった。
「……好き。……好き、だよぉ!」
「今まで、辛かったよね。……話してくれてありがとう、宮ちゃん」
「ふ……うぅっ………うわぁぁーーん!」
堰を切ったように泣く彼女を抱きしめる。
いつも強気な彼女が見せた弱さを、私は決して忘れないと誓った。