イジワル上司に甘く捕獲されました
「……誰にでもはしない。
橘だから心配するし、抱きしめる」

「なっ……」

思わず顔を上げた私の唇にふわっと触れる感触。

「……!」

ほんの一瞬。

それが瀬尾さんの唇だと気が付いたのは至近距離に瀬尾さんの長い睫毛に縁取られた瞳があったから。

触れて直ぐに離れる瀬尾さんの唇。

ゆっくりと、綺麗な瞳を開く瀬尾さん。

気遣わし気に心配そうに瞳を揺らしながら。

「……ちゃんと帰れよ」

固まる私の頭をポン、と撫でて瀬尾さんはエレベーターホールに向かって歩いていった。

残された私は。

ソロソロと震える指を動かして、唇に触れる。

今……。

……キス、した?

瀬尾さんと?

何で?

一人、さらに真っ赤になる私の顔。

私の思考回路はもうこれ以上考えられないと悲鳴をあげている。

「……とりあえず帰ろう……」

情けないひとり言を呟いて。

再びロッカールームに戻ってノロノロと帰り支度をして。

私はタクシーに乗り込んだ。



< 101 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop