イジワル上司に甘く捕獲されました
言い切れなかった拒絶の言葉に口をパクパクさせて。

……でも一番聞きたかったことはそんなことじゃなくて。

キスの理由。

それが一番聞きたかった。

だけど、返事を聞くことが恐い気もする。

……だって私はキスをされて嫌じゃなかったから。

質問を本人にぶつけてもいないのに、あれこれ考えたって仕方ないって理屈では分かるのに。

したかったから、とか意味はない、とか言われたらどうしようと一人悩んでいた私はいつのまにか悩み疲れて眠ってしまっていた。

ヒヤっとした冷気に気が付いて、目を覚ませば八時前になっていて。

最後に時計を見た時は五時くらいだったから、結構な時間を眠っていたことになる。

「……寒い……」

とりあえず寝ボケ気味な頭を動かして立ちあがり、パネルヒーターをつけて。

再びソファに戻ろうとしたらマンション入り口の呼出し音ではなく、玄関の呼出し音が鳴った。

液晶モニターを見ると、瀬尾さんの姿が映っていた。

どうしよう……!

さっきまで悩みながらも眠っていたのに、いざ瀬尾さんの姿を感じると再び悩み出してしまう。

居留守を使う?

寝たふりをする?

……無理がありそう……。

そもそも寝起きで鏡も見ていないし。

化粧も髪もグチャグチャな気が……。

立ちすくんだまま思考を巡らせていると、急かすようにまた鳴る玄関の呼出し音。

呼出し音ってどうしてこう、人を焦らせる機能があるんだろ、とトンチンカンなことを頭の隅っこで考えながら私は無意識に玄関に向かって。

気が付いたら鍵をそうっと開けていた。

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