イジワル上司に甘く捕獲されました
そうっと開けた筈なのに。

ガチャン、と勢いよく扉は外側に引っ張られて。

私が何も言わない内に瀬尾さんが苛立った様子で玄関に入ってきた。

手にはスマートフォンとコンビニの袋。

そして、そのまま目を見開いて驚く私を凝視して、ギュッと腕の中に閉じ込めた。

「……せ、瀬尾さんっ……?」

私の頭上でハーッと言う瀬尾さんのくぐもった声が聞こえて。

小さな弱々しい囁き声が降ってきた。

「……電話も出ないし、玄関出るのも遅いし。
……何かあったのかって思った」

瀬尾さんのスーツの腕の中は暖かくて。

外の少し冷えたパリッとした空気と香水の匂いが絡まって。

ドキドキする香りなのに、何だか安心して泣きたくなってしまう。

抱きしめられたまま動かない私を不思議に思ったのか、瀬尾さんが私の両頬に手を添えて上を向かせる。

「……橘?」

瀬尾さんの心配そうに揺れる綺麗な瞳を見た私はハッとして、俯こうとするけれど、両頬を押さえられていて動けない。

そのかわりに頬がカアッと赤くなっていく。

「だ、大丈夫ですっ。
す、すみません、私……眠ってしまっていたので」

「……何だ、そっか」

一瞬キョトンとした表情をして、それからフッと優しく微笑んでくれる瀬尾さんに。

キュウっと胸が痛くなる。







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