イジワル上司に甘く捕獲されました
あっという間にお正月休みは過ぎて。

いつもの慌ただしい毎日が始まっていた。

そんななか、お正月休みのために遅れていた人事異動が発表になった。

私は、以前、潤さんが話していたようにまだ異動ではなくて、わかっていたとはいえ、ホッと胸を撫で下ろしていた。

ただ、潤さんがもうひとつ話していた、潤さんの後任になる人が札幌支店に正式に着任になった。

「初めまして。
この度、札幌支店に着任いたしました峰岸祐希です」

ハキハキと通る声が印象的なとても綺麗な女の人だった。

黒いサラサラの顎までのストレートの髪に、ハッキリとした二重瞼。

派手な色合いを使わない上品なメイクが似合っていて、大人の女性の雰囲気がそこかしこに漂っている。

細身で背も高くて。

淡いグレーのスーツに黒のハイヒールがとても似合っていて。

艶々の唇には綺麗に口紅が塗られている、大人の女性だった。

綺麗な人ねぇ、と金子さんも驚くほどで。

支店の男性の視線は挨拶をしている峰岸さんに釘付けだった。

「瀬尾くん!
また一緒ね、これからしばらくよろしくね!」

瀬尾さんの席の隣で嬉しそうに顔を綻ばせて手を差し出す峰岸さん。

この季節でもカサカサしていない、とても手入れされた手に、細い指。

その指に上品に施されたピンクベージュのネイル。

そんな綺麗な峰岸さんの手を何故か少しジッと見て。

「ああ、よろしく」

それだけ言って潤さんはパソコン画面に視線を戻した。


< 145 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop