イジワル上司に甘く捕獲されました
「二年近く付き合った時に、俺が異動することになった。
遠距離というわけではなかったし、引っ越しの必要もなかったけど、当時の支店からは離れた場所になるから、仕事帰りに気軽に会うには難しい距離だった。
俺の異動を峰岸は不安そうにしていたけれど、それなりに喜んでくれていた。
……それから、しばらくして峰岸も転勤になった。
アイツも引っ越しの必要はなかったけど、俺達の物理的な距離は随分離れたんだ。
……俺はそれに対してそんなに不安も危機感も抱いてなかった。
それよりも新しい環境と仕事についていくことの方が俺のなかでは大事だった」
少し言いにくそうに私の方を向いて潤さんが話す。
私は潤さんの手をそっと握った。
「……峰岸は峰岸で俺と同じように仕事についていくことが精一杯の毎日を送っているみたいだった。
……お互いに忙しくなっていたんだ。
……俺は余裕もなかったから、峰岸に会いに行ったり電話をすることも少なくなっていった。
元々……友達の延長みたいな気持ちでいた俺は峰岸の気持ちを思いやることができていなかった。
淋しいとか一緒にいたい、とかあまり思えなかった。
……それよりも身体を休めたいとか仕事をしたい、とか思ってた。
……今、思えば子どもだったし、彼氏失格だな」
自嘲気味な弱々しい笑顔を見せる潤さんに私は小さくかぶりを振る。
「……アイツはアイツでこらえきれない、やるせない気持ちを抱えていたんだと思う。
仕事のストレスもあっただろうし、何より俺への不満は相当だったと思う。
二人で会う回数はどんどん減ってたし、そのことでよく口論もした。
峰岸の優先順位が低いことで幾度も嫌味も言われた。
……顔を会わせば、口を開けば喧嘩することが増えて……俺達……いや、俺は疲れていた。
一緒にいる意味がわからなくなっていたし、アイツと離れていることが楽だと思うようになってしまったから」
潤さんが言いたいことはよくわかる。
どちらかが悪いということではきっとない……でも、その時の峰岸さんの気持ちを思うと胸が痛い。
遠距離というわけではなかったし、引っ越しの必要もなかったけど、当時の支店からは離れた場所になるから、仕事帰りに気軽に会うには難しい距離だった。
俺の異動を峰岸は不安そうにしていたけれど、それなりに喜んでくれていた。
……それから、しばらくして峰岸も転勤になった。
アイツも引っ越しの必要はなかったけど、俺達の物理的な距離は随分離れたんだ。
……俺はそれに対してそんなに不安も危機感も抱いてなかった。
それよりも新しい環境と仕事についていくことの方が俺のなかでは大事だった」
少し言いにくそうに私の方を向いて潤さんが話す。
私は潤さんの手をそっと握った。
「……峰岸は峰岸で俺と同じように仕事についていくことが精一杯の毎日を送っているみたいだった。
……お互いに忙しくなっていたんだ。
……俺は余裕もなかったから、峰岸に会いに行ったり電話をすることも少なくなっていった。
元々……友達の延長みたいな気持ちでいた俺は峰岸の気持ちを思いやることができていなかった。
淋しいとか一緒にいたい、とかあまり思えなかった。
……それよりも身体を休めたいとか仕事をしたい、とか思ってた。
……今、思えば子どもだったし、彼氏失格だな」
自嘲気味な弱々しい笑顔を見せる潤さんに私は小さくかぶりを振る。
「……アイツはアイツでこらえきれない、やるせない気持ちを抱えていたんだと思う。
仕事のストレスもあっただろうし、何より俺への不満は相当だったと思う。
二人で会う回数はどんどん減ってたし、そのことでよく口論もした。
峰岸の優先順位が低いことで幾度も嫌味も言われた。
……顔を会わせば、口を開けば喧嘩することが増えて……俺達……いや、俺は疲れていた。
一緒にいる意味がわからなくなっていたし、アイツと離れていることが楽だと思うようになってしまったから」
潤さんが言いたいことはよくわかる。
どちらかが悪いということではきっとない……でも、その時の峰岸さんの気持ちを思うと胸が痛い。