イジワル上司に甘く捕獲されました
「……あなたのこと、誤解していたわ。
真剣に仕事も取り組まなくて、やる気もそんなにないし、責任感もない甘えたお嬢さんかと思っていたのだけれど。
……あなたはいつもきちんと仕事をこなしていたわ。
そのことも謝るわ」

……峰岸さんはやっぱり魅力的な女性だと思う。

自分の部下であっても、年下であっても、受け入れたくないライバルのような存在であっても。

自分に非があればきちんと正面から謝ることはそうできないと思うから。

「……私、峰岸さんに憧れています。
同じ女性として、バリバリ仕事をこなされている姿も。
スーツが格好よく決まる大人の女性であることも……私にはないものを峰岸さんはたくさんもっていらっしゃいますから」

峰岸さんの迫力ある綺麗な顔をじっと見ながら伝える。

我ながら大それたことを言っていると思う。

だけどこれは私の本心だ。

「……まだ気持ちが残っている元彼女にそんなこと言っていいの?
隙あらば告白して奪ってやろうって思ってるわよ?」

フッと意地悪そうな笑みを浮かべる峰岸さん。

「……いいんです。
峰岸さんは公平な人ですから。
……正直、とても不安です。
いつも怯えています。
峰岸さんはとても魅力的な女性ですから。
私が異性だったら絶対に惹かれます。
だけど……峰岸さんに負けないくらい、絶対渡したくないくらい私も瀬尾さんが好きなんです。
だから……」

震えそうになる唇で、しっかり足を踏ん張って峰岸さんを見つめながら話す私に。

ふうっと軽く髪を掻きあげて、諦めたように肩をすくめた。

「冗談よ。
正直、まだ諦めきれない気持ちはあるけど……それは私自身の問題ね。
潤は違う道を歩いているもの、あなたと。
それに私、あなたみたいな真っ直ぐな女子は苦手なの。
……悔しいからお幸せに、なんて言わないけれど。
あなたと潤のことを口外するつもりはないわ」

「……!」

力が入って無意識に握りしめていた拳からゆるゆると力が抜けていく。

「……ホラ、いつまでも突っ立ってないで、さっさと飲み物買いに行くわよ」

サッと踵を返してコツコツと踵をならして歩く峰岸さんはやはり素敵な女性だった。
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