イジワル上司に甘く捕獲されました
今日の作業は打ちきりになり。

潤さんと桔梗さん、私は一緒に帰路に着いた。

ある程度の目処がたってきて、少し明るい兆しは見えてきていたけれど潤さんも桔梗さんも口数は少なく、疲れている様子がよくわかった。

コンビニに寄って帰るという桔梗さんと別れ、潤さんと私はマンションに向かう。

「……疲れている時にごめんなさい。
今日……バレンタインデーだからケーキとプレゼントだけ、後で届けていい?」

エレベーターに乗り込む前に潤さんの顔を見上げて言うと、潤さんは驚いた顔をして、それからフワッと微笑んだ。

「大歓迎」

その言葉に私の鼓動が高鳴った。

「……ごめんな、美羽。
色々用意して考えてくれていたのに……こんな時間だし、ゆっくりもできずで……」

私はブンブンと首を大きく振った。

「ううん、いいの、違うの。
潤さんは悪くないの。
……疲れているのにごめんなさい。
渡せるだけでいいの。
……今日会って渡せるだけで嬉しいから……」

優しい光を瞳にたたえて潤さんが私を見つめてくれる。

自然に絡めた指から潤さんの優しい温もりが伝わる。

いつの間にか速まる心臓の鼓動に。

潤さんへの想いが溢れ出す。

一旦エレベーターを降りて、潤さんに玄関で待ってもらい、大急ぎで冷蔵庫からケーキの箱を取り出して紙袋にいれる。

プレゼントも忘れずに一緒にいれて。

驚いた顔の潤さんを見ながら両手で渡すと。

「……ありがとう」

耳をほんのり赤くして、潤さんが大切そうに受け取ってくれた。

「……本当に嬉しい」

その言葉に、そのはにかんだ表情に胸がキュウッとなって。

バレンタインデーに会えたことに感謝した。

そっと潤さんは紙袋を潰さないように片手で抱えながら、私を引き寄せて。

「美羽……大好きだよ」

優しく呟いて私と唇を合わせた。

潤さんの体温が私に伝わって、唇から潤さんの気持ちが身体の中に入ってくる。

触れるだけのキスはどんどん深くなる。

長い時間キスを繰り返して、私達は唇を離す。

「……この続きは今度、な」

そう言って潤さんは真っ赤な私の頬を撫でて。

お伽の国の王子様のように左手薬指の指輪にキスを落として、ドアから出ていった。
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