イジワル上司に甘く捕獲されました
「……ごめんな」

降ってきた優しい言葉に。

反射的に顔をあげると。

呆れ顔でも面倒臭そうにもしていない、ただ……辛そうな色を瞳に宿した潤さんがいた。

久しぶりの潤さんの腕の中は、懐かしい香水の匂いがして。

その匂いと温かさに止まった筈の涙がまた込み上げる。

……言いたいことも、聞きたいこともたくさんあるの。

どうしてここにいるの?

私を待っていたの?

どうして面談の時、私を見なかったの?

伝えたいこともあるの。

わかってほしいこともあるの。

だけど、ヒリヒリした喉の奥から漏れるのは情けない嗚咽だけで。

言葉にならない。

「……美羽」

名前を呼んでくれる声が切なくて優しくて。

益々泣きたくなる。

ああ、やっぱり。

私はこの人がとても好きで、ここにいたくて。

……離れたくない。

「……っ、潤さ……んっ」

絞り出した言葉と一緒に潤さんの背中に手を回す。

彼がここにいることを確認するように。

ワイシャツを私の涙で汚してしまうことに配慮する余裕もない私を、ただ私の名前を呼びながら、潤さんはずっと抱きしめてくれた。




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