イジワル上司に甘く捕獲されました
「はあ?
それを言えばお前もだろ」

呆れたように言う瀬尾さんはキッチンに入ってシンク下の収納から鍋を取り出す。

「いえ、あの部屋は叔母の持物なんです。
叔母が海外赴任になって空家になるからということで私達姉妹が住まわせてもらっているんです」

「へえ、いい叔母さんだな。
俺も似たようなもんだよ。
ここはお袋の持物だ。
札幌に幾つか両親が部屋を持っているから、余っていて便利な場所の物件を使っているんだ」

何でもないことのように言って鍋に湯を沸かし始める瀬尾さん。

……いえ、札幌、マンション高いですよね……。

なのに、さらっと幾つかって。

「……瀬尾さんのご両親って何されてるんですか?」

素朴な疑問をぶつけたら。

「あー……何か色々経営してるよ。
母親は化粧品会社とか経営してるし」

「お、お金持ちじゃないですかっっ。
何でうちの会社で働いてるんですか……」

「別に親の会社を今すぐ、継ぎたいわけでもないし。
興味ないからな。
俺じゃなくてもいいだろうし」

これまたアッサリと返された。

執着心がないのか何なのか……。

それにしても。

仕事はできるし、見惚れるくらいの容姿。

しかもお金持ち……そりゃモテるよね……。

こんなに揃っている人がいるのかと私は羨ましいを通り越して憧れの気持ちを込めて瀬尾さんを見た。

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