イジワル上司に甘く捕獲されました
「な、なっ」

うまく言えない私を見て。

クスクス楽しそうに笑う瀬尾さん。

「良かったぁ、二人とも気が合うみたいで。
じゃ、瀬尾さん、よろしくお願いしますね!」

眩いばかりの笑顔を残して、やって来た時と同様サッサと帰る真央に引っ張られて。

私はまた自宅に戻っていた。

「ち、ちょっと真央っ。
何であんなこと!」

問いただす私に真央はしれっと言う。

「何が?」

「何が、じゃないよ。
瀬尾さんは上司なんだから。
しかも……」

「しかも、何よ?」

ズイッと身を乗り出して私の顔を覗きこむ真央。

「いい?美羽ちゃん。
あんなに素敵な人が真上に住んでいるんだよ。
しかも会社の上司。
これはお近づきになるしかないでしょ?
残念ながら私には愛する翔がいるけど。
美羽ちゃんはフリーでしょ?
瀬尾さんもフリーが判明。
まあ、多分フリーとは思っていたけど。
いいじゃない、ご飯食べたり近所付き合いしたって。
何がダメなのよ?」

正論を言われる。

うっと言葉に詰まる私に。

「……迷惑だったら瀬尾さんが断る筈でしょ?
断らずに引き受けてくれたんだら甘えたらいいの。
美羽ちゃんは甘え下手なんだよ。
さみしがり屋のくせに。
自分で抱えすぎなの。
……それに瀬尾さんって多分だけど、美羽ちゃんのこと……」

「私が何?」

怪訝な顔をする私に。

何でもない、と言葉を濁して真央は再び荷造りを始めた。

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