イジワル上司に甘く捕獲されました
迫力負けしそうになるけれど、負けじと虚勢をはる私。

「え、遠慮しますっ」

折角ひいた筈の火照りもまた復活して。

そんな私の顔を見てクスクス笑う瀬尾さん。

……やっと少しだけ機嫌が良くなってきたみたい。

結局、エレベーターに乗せられて。

何故か離されない手を見る。

……恋人繋ぎとかではなく、普通の繋ぎ方だけど。

そこに意識が集中してしまう。

「あの……何で……手を?」

聞く私に。

「逃げるだろ」

と一蹴する瀬尾さん。

こんなエレベーターの中で逃げられる訳がないのに。

「……何で機嫌悪いんですか?」

然り気無く聞いてみたら。

「……いくら妹の彼氏だからって無防備過ぎだろ。
しかも、何でそんな足出してるんだよ」

物凄く小さな声に仏頂面を足して教えてくれた。

「……え?」

反射的に足を見る。

「ひ、膝上五センチ丈ですよ?
夏のショートパンツとしては普通ですけど……」

言い返す私に。

再びムッとした顔をする瀬尾さん。

今日私が身に付けているのは白地に紺色の縦ストライプの半袖カットソーに紺色のシンプルなショートパンツだ。

まだまだ日中は暑いし、このショートパンツは洗濯をしてもアイロンがけが不要だし、乾くのも早くて私のお気に入りだ。

「……鈍すぎ」

少し屈んで私の耳元で囁く低い声に。

近すぎる距離から香る瀬尾さんの匂いに。

言うまでもなく私の心拍数は跳ね上がり。

耳から私のドキドキが瀬尾さんに届きそうだ。

……本当にいつになってもこの声には慣れない。









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