イジワル上司に甘く捕獲されました
「……体調悪いのか?」

ロッカールームを出た私に、向けられた低い声。

目の前の壁に背中を預けながら腕を組んで立っている男性。

高い身長に長い足を包む細身のスーツ。

下手をすれば鋭く見える綺麗な二重の瞳が今は心配そうに揺れている。

……今、一番会いたくなくて、だけど会いたかった人。

「瀬尾さん……?」

驚く私はそれを口にすることが精一杯で。

私の質問には答えずに、彼は私に手を伸ばす。

瞬間。

ふわっと香るいつもの香り。

「……熱は?」

ソッと私の前髪越しに触れる温かな長い指。

「……!」

私の体温が一気に額に集中する。

「……顔と目が赤いけど。
泣くほど辛い?」

顔を覗きこまれて。

誤魔化せる、と思っていた目をアッサリと見破られて。

私はどうしてよいかわからなくなる。

「だ、大丈夫です。
さっきは……少し身体が辛かっただけで。
し、仕事中にすみませんでした。
せ、瀬尾さんはどうして……」

「酷い顔色で今にも倒れそうだったにもかかわらず、仕事に戻るって橘が言っているって藤井から報告されたから、迎えに来たの」

「だ、大丈夫です」

思わず後ずさる私の手を掴む瀬尾さん。

「そんな真っ赤な顔で?
熱、本当にないのか?」

グイッと掴んだ手を引き寄せて。

コツン、と私と額を合わせた。

「……!」

ドキンドキンドキンドキン……!

私の心臓が狂ったように動き出す。

身体中が心臓になったみたいに、音が響く。

「……熱いな」

そっと私から額を外して瀬尾さんが私を見下ろす。










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