吉田は猫である。

「ブサイクですから」

「うるっさい!」


心配してやったのに、この返し。


「心配して損した!」と大声で言うと「別に心配してくださいなんて一言も言ってないです」と吉田は可愛げのないことをさらりと言った。ムカツク。


「もう私帰るから!」


イライラを抑えきれず立ち上がる。

にゃあ、と猫は私を見上げる。吉田も私を見上げた。


「そうですか」

「そうですよ!」


「じゃあね!」と大きな声をかけようと思ったけど、やめた。


「先輩?」


いきなり黙り込んだ私を不自然に思ったのか、吉田は不思議そうに尋ねる。


「じゃあね!」と怒鳴るように言うその代わりに私は吉田の方を向いてにんまりと笑ってやった。


「あの吉田が、あの不愛想でクールぶってる吉田が、学校に迷い込んだ猫にデレデレで『よしよし』とか『可愛いね』とか言ってたの、バラすから!」


すると吉田の顔から一瞬で血の気が引いていくのが分かった。

音を付けるなら、サー、という感じ。

まるでこの世の絶望、というような表情をしている。
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