黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい

24.

ミネット王が住むマグダレナ宮殿はブロムダールを五日かけて南下した小高い丘の上に建ち、交易と芸術に栄えた王都を見下ろしている。

城下には前王ルドルフの短い在位期間に建設された大学や病院が立ち並び、学問と文化の繁栄を支えた。
市場が拡大し、富を求める商人と職を探す浮浪者が流れ込み、城壁の各所では関税徴収が行われる。

社交シーズンを迎えた宮廷は貴族たちで賑わい、夜毎豪勢な舞踏会が開かれていた。

フィリーにも数えきれないほどの招待状が届く。

両親を亡くして王都を追われ、十七年も田舎で幽閉されて、しまいには敵国に誘拐された王女だ。
ゴシップ好きが放っておくはずはない。

幸運なことに、フィリーは王太子が使う離れの一角に部屋を与えられ、好奇の目からは守られていた。

広い部屋では派手なシャンデリアに華美なベッド、仰々しい装飾が施された暖炉と使いもしない来客用のテーブルセットに囲まれ、目眩がする。

会ったこともない人たちから次々に手紙と贈り物が届き、フィリーは困惑していた。
今朝もまた侍女たちが新しいプレゼントを順番に運び込む。

「ランピーニ侯爵令嬢アナスタシア様から、お花の贈り物です」

中でもフィリーを辟易させたのは、ランピーニ侯爵の娘から毎日届くマーガレットの花束だった。

趣味の悪い嫌がらせなのか、皮肉のきいた忠告か。
まったく悪意がないとすれば、アナスタシアは父の企みを知らないのだろうか。

「ありがとう。そこへ飾っておいてください」

フィリーは毎朝、テーブルを埋め尽くすプレゼントひとつひとつの贈り主の名前を聞いた後、見晴らしのいい北側の窓辺に座って祈りを捧げる。
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