黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい

ギルバートは死んだと聞かされた。
マリウスが剣で心臓を突き刺したのだという。

ギルバートがほかの誰かに負けるとは思えないけれど、あれだけの怪我をしていたから。
信じていても、不安で泣きたくなるときがある。

フィリーは王都へ着いてからずっと部屋に閉じこもり、ブロムダールの方角に向かって祈っていた。

握り合わせた手の片方には、いつも黒いマントの切れ端を巻いている。
ギルバートがフィリーの肩の止血に使ったものだ。

ミネット風の豪奢で美しいドレスに不似合いだと侍女が控え目に申し出ても、フィリーは寝ているときにも放そうとはしなかった。

そうしていれば、そばにいるふりさえできる。

きっとオスカーたちがギルバートを助け出したに違いない。

本当に敵国の英雄を討ち取ったなら、マリウスはギルバートの亡骸を持ち帰ったはずだ。

フィリーとの約束を守り、ギルバートの襲撃を不問にするため、プルガドール湖の底に捨て置いたなどと嘘を言っている。

何度も自分にそう言い聞かせた。

ミネットは悪魔の死に歓喜し、婚約者を奪い返した王子が結婚をして国を更なる安泰に導くことを望んでいる。

マリウスは王者の風格を、フィリーは正統なる王家の血を受け継いだ。
粛清され力を削がれた旧派でさえ、この結婚を喜ぶだろう。

ふと見られている気配を感じ、フィリーは窓の下を見下ろした。
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