黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい
煙突掃除人とフィリーが泉水のベンチに座っているのを見ると、太った男が眉を吊り上げて怒鳴った。
「貴様、そこでなにをしている!」
バイロンがすぐにフィリーを庇って飛び出し、頭を垂れる。
「国王陛下、ランピーニ侯爵閣下!」
フィリーはパッと立ち上がった。
小太りの男が怒りを込めてフィリーを睨みつけている。
「お許しください、閣下。煙突掃除に疲れて休んでいたところ、話し相手になってくださっただけなのです。王女殿下は私が何者かもご存知ありませんでした」
「ええい、称号も持たない煙突掃除人が私の許可なくしゃべるな! この小娘と顔を合わせれば、なにを疑われるかわかっていての行いだろうな!」
太った赤茶色の髪の男がランピーニ侯爵だ。
卑怯なやり方でブライン砦を陥落させ、十年の支配と搾取をもたらし、マルジオの利益に貢献して取り入った男。
どうしても王女を亡き者にしたいのは、ランピーニ侯爵がどんなに手を尽くしても国王に捧げられないものを、フィリーが持っているからだろう。
フィリーはツンと顎を上げて、好きな男からすべてを奪った相手を見返した。
バイロンの横に並び、礼儀正しく膝を折る。
「はじめまして、ランピーニ侯爵閣下。お目にかかれて光栄です」
ランピーニ侯爵は挨拶を無視して王女に人差し指を突きつけた。
「王都に来た途端に旧派と接触とは、いったいなにを企んでいたのか説明してみろ。つい先日まで敵国にいた娘だぞ。とんでもない洗脳を受けてきたに違いない。事と次第によっては議会にかける必要がある」