黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい
知っている。
フィリーがマリウス以外の男に恋をしたことを。
ギルバートの生死を調べたのは、あの襲撃を把握しているからだ。
王女がほかの男と結ばれることを、マルジオは決して許さない。
そのための十七年だった。
王が震えるフィリーの肩に手をかけ、優しく諭す。
「十七年で事情が変わったのだ。マリウスが結婚を引き延ばしている間に、残念ながら、私の異母弟を慕っていた者はほとんどいなくなってしまった。古い血筋にこだわる者もいない。皆、私を王と認めている。それなのにお前がいては、国が混乱してしまうとは思わないか。敵も攻め入ってくるかもしれない、また誘拐でもされて争いの火種になったらどうする。そんなことはお前も望まないだろう。王女として国の利益になる方法を私が教えてやる」
マルジオが喉の奥で低く笑った。
「それとも、愛する騎士に説得してもらうか」
「やめて!」
フィリーの声はほとんど悲鳴のようだった。
頭の中に警告が鳴り響き、恐怖で指先が冷たくなっていく。
ギルバートを守らなくては。
ミネットが二度と彼を傷つけることのないように。
フィリーは背筋を伸ばして王を見返す。
「私がそれを受け入れるなら、彼は我が国にとってなんの価値もない男です」
マルジオが満足そうに藍色の目を細めた。
「いいだろう。死に方は選ばせてやる」