黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい

世話になる手前、黒旗騎士団もなにやら手伝っているらしかった。
一階の広間で待てと言ったはずだが。

でも実のところ、フィリーが腕の届く範囲にいるのならなんでもよかった。
食事も酒も好きにすればいい。

ギルバートは暖炉の火を強め、眠っているフィリーの顎の下まで毛布を引っ張った。
ずっと握りしめていた手もしっかりと包む。

ベッドの端に腰かけ、いくらか血色を取り戻した寝顔を見下ろす。

世間知らずで泣いてばかりいた敵国の王女を、まさか自分がこんなふうに愛してしまうとは。
賢く美しくなっていくフィリーを、そばで見ていたのがいけなかった。

だけどもしかしたら、深い光を宿した翠色の目に見つめられたとき、すべては決まっていたのかもしれない。

ギルバートは腕を伸ばし、亜麻色の髪を梳いた。

「はやく目を覚ましてくれ」

きみの騎士は現実(ここ)にいる。
夢の中をさまようフィリーに囁き、額に優しくキスをした。





夜が明ける少し前、マリウスが階段を上ってきた。
足音を聞きつけたギルバートは、仏頂面で薄くドアを開ける。

マリウスは慌てて近衛師団の盾を構えた。
ギルバートが斬りかかってこないのを確かめて、片方の眉を上げる。

「僕は思ったより嫌われていないみたいだ」
< 150 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop