黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい

ギルバートは鼻を鳴らして言い返した。

「ああ、おめでとう」

無慈悲に閉ざされるドアの隙間に、マリウスが慌てて片脚を滑り込ませる。

「ちょっと待て、話を聞け。フェリシティはまだ目を覚まさないのか」

ギルバートは黙って頷いた。
元婚約者のくせにいけ好かないやつめ。

「僕は王都へ戻らなくてはならない。朝が来たらミネットは混乱するだろう。父の始末と、僕の結婚と、きみたちに頼まれたランピーニ侯爵の悪事に関する調査も進めなくては。フェリシティの回復を待ちたかったけど、そう悠長にしていられないんだ」

「らしいな。すぐに出発するといい」

マリウスがムッとして顔をしかめる。

「きみはこのままフェリシティを攫っていくんだろう。最後に会わせてやろうとは思わないのか。僕は別れ話の時間まで与えたのに」

その別れ話の最中にわざわざフィリーのほうを銃で狙わせた男がよく言う。

ギルバートは素っ気なく首を振った。

「正気か? 俺なら確実にお前の心臓を撃ち抜く」

マリウスはギルバートの過保護さにすっかり呆れているらしかった。

「なあ、言っておくけど、きみが僕の婚約者を奪ったんだぞ。僕と結婚すれば、フェリシティはいずれ王妃になって、大勢の人に祝福されるはずだった。悪者はきみのほうだからな」
< 151 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop