黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい
31.
波の音がする。
夢から醒めると、フェリシティのそばには騎士がいた。
窓の外で白い雪と日の光が揺れている。
暖炉にはくべたばかりのまだ真新しい薪が燃え、部屋の中を暖めていた。
ゆっくりと身体を起こして、床に両足をつく。
フェリシティは静かにベッドを下り、椅子に座って眠る男に近づいた。
騎士は妖精がとっておきの魔法をかけたかのように、端正な顔立ちをしている。
左の目の下にあるホクロはいたずらでつけられた。
フェリシティが正しく彼を好きになる目印に。
男はまだ目を開けない。
でもフェリシティにはわかっていた。
騎士は、縁が氷のように淡く透き通った美しいシアンブルーの目をしている。
フェリシティは背を屈め、ギルバートの左頬にキスをした。
「ありがとう。私を見つけてくれて」
ギルバートが腕を伸ばし、フェリシティの背中を引き寄せる。
強く抱きしめられ、唇にキスを返された。
ギルバートの大きな手のひらが頭を撫で、髪を梳いて、頬を包む。
硬い胸も、広い肩も、筋肉質な腕も、もう二度とフェリシティには戻らないと思っていた。
キスの合間に瞼を上げる。
氷の目がまっすぐにフェリシティを見つめていて、またキスをしたくなる。
永遠に繰り返す。
ギルバートはフェリシティの顔中にキスを降らせると、つむじにも首筋にも指の先にも唇を押しあてた。
フェリシティは心臓の音に耳を寄せるように、ギルバートの腕の中に小さく埋まる。
波が引くまでじっと動かず、目を閉じていた。