黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい
ギルバートが額に囁く。
「きみを失ったんだと思った。もう二度と俺をおいていかないでくれ」
フェリシティはパッと顔を上げ、目を眇めた。
「わかっていると思うけど、知っていたからここを選んだのよ。この城にいれば、きっとあなたが盗みにきてくれるって。まさか国王があの洞窟を知っているとは思わなかったの」
マルジオはフェリシティかギルバート、もしくは両方を泉下の底へ放り込み、ふたりを永遠に分かつつもりだった。
フェリシティがマリウス以外の男に恋をすることは許されていない。
しかもギルバートはフリムランの救国の英雄だ。
ミネット王でなくても、世界中が反対する。
ギルバートが不機嫌そうに顔をしかめ、フェリシティの頭に顎をのせる。
「城の裏手に洞窟があることを、きみの世話役が教えてくれたんだ。あと少しで間に合わなくなるところだった。これ以上危険な目には遭わないと約束してくれ」
「まあ、ゾフィが? ゾフィと話をしたのね?」
ギルバートがフェリシティを抱き上げ、大股でベッドへ連れていく。
フェリシティは首まで毛布に包まれながら、期待を込めてギルバートを見上げた。
もっと話を聞かせてほしい。
ゾフィはどうして、突然現れた敵国の騎士に洞窟のことを教えたのだろう。
マルジオはどうなったのか。
それから、ギルバートはいつまでここにいてくれるの?
ギルバートがそっと髪を撫でる。
「まだ夜が明けたばかりだ。きみは休まなくては。目が覚めたら話をしよう」
フェリシティはとっさにギルバートの腕を掴んだ。