黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい
「ダメ! そばにいたいの」
あとどれくらい一緒にいられるかわからないのに、夢の中に戻るなんてバカげている。
ギルバートが小さく片方の眉を上げる。
フェリシティはパッと頬を赤くした。
子どもっぽいわがままだったかもしれない。
「あの、困らせたいわけじゃないの。あなたにも仕事があるわ。ただ、私はもうたくさん眠った気がするし、話しておかなくてはいけないことはあるでしょ。あなたをあまり長くミネットに留まらせることはできないから……」
言い訳はキスで遮られた。
唇を離し、ギルバートがいたずらっぽく笑う。
「俺がきみから目を離すと思うか、フィリー」
フェリシティは悔しくなって口を閉じた。
なぜギルバートはこんなに魅力的でいる必要があるの?
「でも、きみがそうやって正直になるなら、俺を捨てたことも、許してやってもいい」
ギルバートが愉快そうに目をきらめかせ、毛布の中に潜ってくる。
大きな身体でベッドのほとんどを占領してから、フェリシティを腕に引き入れた。
フェリシティは眉を吊り上げる。
「私がいつあなたを捨てたの?」
ギルバートの低い笑い声が、広い胸に響いてフェリシティの肌を伝う。
フェリシティはギルバートの顎の下に額を押しつけた。
満ち足りたため息を吐く。
優しくて力強い腕の中が好きだった。
ずっとこうしていられるならいいのに。
「目を閉じるんだ。俺はここにいる」
ギルバートが耳殻にキスをして、背中をそっと抱く。
フェリシティは夢から醒めても、ギルバートがまだそばにいてくれることを祈った。