黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい
暖炉の前で食事を囲み、並んでソファに座る。
パンと玉ねぎのポタージュと鱈の塩漬け、それからエールのあたたかい夕食だった。
「それを食べたら診察だ。医者を下で待たせている」
ギルバートはフェリシティがなにをどのくらい口に運ぶか、すべて記憶しているみたいだった。
フェリシティが頷き、オスカーに向き直る。
「ギルバートの怪我はどのくらいひどいのかしら。まだ治っていないんでしょう、あんな大怪我をしたのは私のせいなの」
オスカーは愉快そうに片眉を上げた。
「ギルにはちょうどいい休息だった。それにフィリーのおかげで、ミネットの王太子はギルバートを生かして、俺たちをここへ連れてくることにしたんだから」
フェリシティは目を丸くしてギルバートを振り返った。
「マリウスが? 彼もブロムダールにいるの?」
ギルバートが肩を竦める。
「あいつのことでなによりわかってほしいのは、もうきみの婚約者ではないということだ」
ギルバートはフェリシティと別れてからもう一度見つけ出すまでに起こったことを、順番に話してくれた。
マリウスがギルバートを生かし、マック・アン・フィルを走らせて砦に知らせたこと。
ミネット王室が王太子とランピーニ侯爵令嬢の結婚を決め、フェリシティとの婚約を破棄したこと。
王都へ向かう黒旗騎士団がマリウスと近衛師団を見つけ、フェリシティの居場所を聞き出したこと。
オスカーとハーヴェイがミネット人になりすましたこと。
マルジオが打倒されたこと。
ブロムダール女伯ヴァイオレットが、命懸けでギルバートを説得したこと。