黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい
夕食を終えると、ギルバートはフェリシティを膝の間に座らせ、落ち着くまでベッドの中でじっと抱きしめてくれていた。
マリウスと結婚することが、生きているための条件だった。
婚約を破棄されたら、これから先をどうしていけばいいのだろう。
フェリシティはギルバートの腕の中で目を閉じ、ひとりきりの夜に何度もそうしてきたように、また波の音を数えていた。
それが誰なのか、最初はわからなかった。
ギルバートに許され、世話役のゾフィとプラチナブロンドの髪の貴婦人が暖炉の前のソファに腰を下ろす。
深いヘーゼルの目をした憂いのある美しい人だった。
フェリシティもギルバートに腕を引かれ、向かい側のソファに座る。
ギルバートはフェリシティの手を握ったまま話し始めた。
「あなたたちがミネット王から隠し通そうとしたことがあったはずです。でも、今は俺がそばにいます。話してくれますか」
ゾフィがためらいがちに頷き、フェリシティを見る。
「このことをあなたにも話さなかったのは、王女が孤独ではないと思われたら、国王陛下がどんな気まぐれを起こすかわからなかったからです。どうか私たちを許してください」
ゾフィがフェリシティの目をまっすぐに見て話しかけること自体、初めてだった。
フェリシティは驚いて頷き返す。
「もちろんよ、ゾフィ。あなたたちに育ててもらったことを感謝しているわ」
ゾフィはそれだけで涙ぐんで、話し始めるまでに少し時間が必要だった。
瞼を拭い、胸を押さえて息を整える。