黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい

「王女殿下のお父君であるルドルフ王が暗殺された後、私はマーガレット様とともに王都からブロムダールへ逃れてきました。マーガレット様は方々へ手紙を書き、三ヶ月後に産まれてくる子どものために助けを求められた。良い返事をくれた臣下は次々に粛清され、次第にほとんどを断られるようになりました。ここからずっと南にある大国ナバが母子の保護を申し出た頃には、臨月を迎えられていたのです。そして、ヴァイオレット様に宮殿への出頭命令が下りました」

ゾフィの隣に座るブロムダール女伯は、深く俯き、忙しなく両手の指を組んだり解いたりしている。
顔を上げたときには、頬が羞恥の色に染まっていた。

ブロムダール城の対岸にある屋敷に住んでいるのが伯母だと知っても、寂しさは感じなかった。

でも今は、もしかしたら母はこんな女性だったのではないかと思う。
強くて優しくて、大事なものを守る力のある人だ。

「妹が……マーガレットが考えた方法だったの。産まれてくる子どもをマリウス王太子殿下と婚約させ、正統なる王家の血筋を捧げることを誓えば、まだ血統のせいで反対派の多かったマルジオはあなたを生かすだろうと。私はあなたの監護権を得るために、自ら妹の居場所を密告し、王に取引を持ちかけたわ」

ギルバートが片方の眉を上げる。

「それなら、フィリーの婚約を決めたのは母親だったのか」

ゾフィが早口で言い募った。

「マリウス王太子殿下は、私がまだマーガレット様の侍女だった頃から、本当は叔父であるルドルフ王のことを慕っておられました。マーガレット様のお気持ちを理解して、協力してくださったのです」
< 159 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop