黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい
けれど、ギルバートがフィリーを見つけたことを後悔していると思われるのは心外だった。
任務を放棄するつもりはない。
プタウの宿で眠ったふりをする敵国の騎士に礼を言ったこの女を、必ず安全な場所へ連れていくと決めた。
今のところ、唯一フィリーを守ってやれる憎き王太子のもとへ。
「なぜこんなところで寝ている」
不機嫌そうなギルバートを見上げ、オスカーが金色の目をきらめかせた。
「お前が目を離すなと言ったんだろ。それとも、俺がベッドへ連れていくほうがよかったか?」
ギルバートは顔を顰めた。
「……いや、すまない」
理不尽に責めたことを謝り、眠っているフィリーを抱き上げる。
この娘に腕を回すたび、あまりに華奢で軽い身体に驚かされる。
大きな目を縁取る長いまつ毛が、フィリーの白い頬に影を落としていた。
さすがに疲労も限界だったのだろう。
生まれてから一度も城を出たことのない娘が黒旗騎士団とともに馬で旅をするためには、相当な無理が必要だったはずだ。
なにがおかしいのか、オスカーが愉快そうに声を上げて笑う。