黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい

9.

同じ夢を見た。

夢の騎士に連れられ、伝説の火竜の背に乗る。
海を渡り、山を越え、輝く星を手に入れても、最後にはブロムダール城の上空へ戻ってくる。

このままどこかへ連れ去ってほしいと、フィリーは懇願する。
けれど、夢の騎士はフィリーを手放す。
真っ逆さまに落ちていく。

フィリーは目を開けた。

いつもの朝と変わらず、ベッドから落ちたらしい。
キルトに包まれた身体をむくりと起こし、床に座り込んで辺りを見渡す。

サーモンピンクの壁と磨き上げられたオークの床に囲まれた、小さな部屋だった。
カーテンの隙間から細い日の光が差し込んでいる。

ベッドのほかには椅子とテーブル、反対側の壁に暖炉が備え付けられただけの、シンプルで品のいい部屋だ。

またベッドから落ちる音を聞きつけられたらしく、部屋のドアがノックされた。

フィリーは返事をして立ち上がろうとする。
けれど思っていた以上に疲労の溜まった足がキルトに縺れ、バランスを崩して膝をついた。

慌ててドアが開く。
顔を覗かせたのは、ダークブラウンの髪をした若い女性だった。

「まあ! だいじょうぶですか」

目を丸くしてフィリーに駆け寄る。

「ええ、転んでしまっただけです」

フィリーが恥ずかしそうに頬を染めると、彼女はホッと息を吐いて微笑んだ。

「ああ、よかった。ギルバート様の大切なお客様だもの、お怪我をされたら大変です」
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