黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい

この部屋はキール伯爵邸のゲストルームなのだろう。

昨晩、オスカーとふたりでギルバートの帰りを待っていたのを覚えている。
途中で眠ってしまったのだ。

ここへ運んでくれたのはきっとオスカーだろうけど、もしかしたらギルバートだったかもしれない。

「あなたのお世話を仰せつかりました、カミラと申します。八年前からここでギルバート様にお仕えしています。よろしくね、フィリー」

仕立てのいい黒の侍女服を着たカミラは、フィリーの両手をとって立ち上がらせると、窓辺の椅子に座らせた。

「お腹が空いてる?」

フィリーは首を振った。

「いいえ、昨夜遅くにスープとミルクをいただきましたから」

「わかりました。食事は後にしましょう」

カミラが一旦外へ出て、使用人たちに指示を出した。

部屋の中に猫足のバスタブが運び込まれる。
熱いお湯とタオルと着替えも準備された。

フィリーは飛び上がりたいほどうれしくなった。
どうやら入浴させてもらえるらしい。

ブロムダール城を出てからはゆっくり休息をとることもできなかったので、手や足は汚れ、髪には埃が絡まっているし、身体中がぐったりしていた。

使用人たちが支度を終えて部屋を出ると、カミラがフィリーの目の前に立ち、昨夜から着ているドレスを脱がせにかかった。

「さあ、今からとびきりの令嬢になれる魔法をかけますから」

フィリーはついカミラの手を掴んだ。
< 52 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop