黒騎士は敵国のワケあり王女を奪いたい
11.
またギルバートを失望させてしまった。
煌びやかな人波を縫って絡み合う視線を逸らし、フィリーは唇を噛んで俯いた。
カミラに埃を落としてもらった後、王家の馬車がフィリーを迎えにきて、城に着くなりたくさんの侍女と仕立屋に囲まれ、髪型やドレスや靴について大変な議論が始まった。
慌ただしい着せ替えに目を回しているうちに、リチャードが現れてフィリーの手を取り、灰白色に輝く大理石の大階段を下りていくと、そこはもう舞踏会のさなかだった。
リチャードに促されるまま、フリムランの貴族たちと挨拶を交わす。
フィリーは必死にゾフィに教わった所作と礼儀を思い出そうとした。
それなのに、奥の壁に背中を預けて険しい顔をしている騎士が、どうしてもフィリーの思考を妨げる。
ほとんど睨みつけられていると言ってもいい。
ギルバートは承知なのだと思っていた。
あんなに怒っているということは、フィリーが屋敷を出たことさえ知らされていなかったのだろう。
今すぐ伯爵邸へ戻りたい。
もしくは、ギルバートのそばへ走って行って言い訳をしたかった。
金箔に飾られた王座の間は足が竦むほど眩しく、目に映る誰もかも高貴で華やかで洗練されている。
けれどリチャードがフリムランの名門貴族を次々と紹介するほどに、ギルバートがどんなに特別な男性かを思い知らされた。
フィリーはまた我慢ができなくなり、ほんの少し目を上げてギルバートを探す。
みんなが声をかけられたいと思っている、その視線の先にキール伯爵はいた。