ある日、ビルの中、王子様に囚われました。
「では行ってきます。と言っても下のフロアの会議室ですから何かあればすぐに戻ります」
「は、はい。お気を付けて」
「もし新澤が戻ってきたら開けなくてもいいので」
とことん新澤さんを悪く言う天宮さんにどう対応していいのか分からない。
けれどそんな事は出来ないので頷かず誤魔化した。
「幼馴染みと言いますか、昔からのご友人らしいです。社長が両方同時に引き抜かれるほど、どちらも仕事が出来る方々ですよ」
「そうなんですね」
「どこに居ても視界に入るのが嫌なんだそうです」
楽しそうに、まるで孫の事を話す素振りに私も笑う。
このオフィス、いや、このビルに入って漸く緊張が緩んだ気がする。
「あの、社長……お祖父さんの具合は大丈夫ですか?」
「はい。先ほども言いましたが、大丈夫ですよ」
「……じゃあ心配してる皆さまにもお伝えした方がいいんじゃないでしょうか?」
きっとお祖父さんの容体が心配でギスギスしてるのかもしれない。
少しでも大丈夫だと分かれば、財産の話で争うことはないだろうし。
「きっと安心して、会議も穏やかになるかもしれませんよ」